SEVENTH HEAVEN



「・・何寝てるんだ」

 そう言うと男は彼の鼻を思い切りつまんだ。

「い・・いひゃいよ・・リボーン」

 間の抜けた返事に脱力しつつ、ボスを両腕に乗せ応接間を横切る。
向かう先は真っ白なシーツだ。勿論飲んだくれた挙句潰れたボスを
介抱する気など男にはさらさら無い。

「随分潰れたな、何飲んだ・・?」
「・・当ててみてよ」

 腕の中の掠れた声が扇情的で、リボーンは綱吉を
ベッドに下ろしながら彼の唇を深く啄ばんだ。
唾液さえ、ドライ・ジンの味がした。

「・・ゴードンのジン・・お前、一瓶空けたのか」
「君が・・好きだって言ったから・・」

 綱吉の背の下でスプリングが音を立てて軋んだ。

「――飲み干す必要はないだろ」

 そう言って、唇を掻き乱す。従順な舌は逃げるどころか挑むように絡みつき
――下手なカクテルより上手いな。
 そんな場違いな感想を抱かせ、リボーンは微笑んだ。
 蕩けているボスも悪くはない。
それが自分の目の前だけ、であるのなら。

「――七番目の天国、か」

ドライ・ジンにマラスキーノ、グレープフルーツを
絞って合わせた雲の上の「白」
イスラムにおいて最高位の天使が住むとされる「楽園」

 その名をかたどったカクテルの名前を彼が呟くと、
綱吉は唇を汚したまま「正解」と微笑んだ。艶やかな笑みに
リボーンは生唾を飲み込む。微笑さえ凄みがあった。

「・・よく分かったね」
「・・飲みすぎだ、ばか」

 セブンス・ヘブンはその口当たり故深追いし易いカクテルだった。
そんな強い酒を飲めばいくら飲みなれているボンゴレと言えど
前後不覚に陥るだろう。酔いたくなるような何かが、彼の身に起きたのだろうか。
そうリボーンは考えた。思い当たる節はない。

「君に怒られるのも・・悪くないね」

 そう言う綱吉のシャツのボタンを首からひとつひとつ外していく。
理由は体に聞くしかないだろう。
言葉を失っても感覚は如実に、質問の答えを教えてくれる。

――そんなに酔って・・誰を待ってたんだ?

 口づけを重ねるリボーンの頬に手を当て、綱吉は「捕まえた」と笑った。
 答えは天国の、すぐ近くで見つかった。