Night




ドアが開いた瞬間、背筋に怖気が走った。
部屋に流れ込んだ冷気が全身を覆い、喉と首を
ゆっくりと絞めていく。呼吸が出来ない。
脈拍は早鐘のようだ。
脳内の酸素が不足し思考回路も停滞して――

「まだ、起きていたのか」

 彼の声が俺の意識を現実に呼び戻す。
死神は死臭にさえ気づかない。むせ返るような
血の匂いと、人間を殺した人間が放つ独特な儚さ。
野生の獣より顕著な殺気に心臓まで止められそうだ。

こんな光の逃げ道の無い新月の夜は、帰ってきた
リボーンの存在感に息が止まりそうになる。
恐ろしい男だと今更ながら実感する。

「うん・・おかえり」

 返事をする息も絶え絶えだ。
何がそんなに俺を恐れさせるのは言葉に出来ない。
ただ、心臓が五月蝿い。息が苦しい。

「――寒いのか?」

 彼の息が髪にかかり、俺は身を竦ませた。
拒絶したいわけじゃない。
むしろ、粉々になるくらい彼が――欲しい。

「・・違うけど・・っ、あっ・・!」

 彼の舌が首を這い、舐められた跡が蒸発して俺の熱を奪う。
生暖かく柔らかい舌。この世で一番魅惑的で扇情的なもの。
俺を高ぶらせて貶める彼のもう一つの凶器。

「んっ・・やだ・・リボーン!」
「やだ、じゃねーだろ」

 彼の舌が耳に押し入り、俺の聴覚を犯す。

シャツの第二ボタンを外される音が他人事のように
響いている。素肌を十本の指が這い、俺の臍の位置を確かめる。
その下の高ぶりも、ゆっくりと侵食され膨張していく。

「・・なんだボス、自分じゃしねーのか」
「しないっ・・ん、・・はぁ・・ん、あ・・!」

 彼に扱かれて腰を振った。指でつくった筒状の凶器が
俺を締め上げて離さない。
本当は俺だけ気持ちいいんじゃなくて、ちゃんと君も感じて欲しいのに。

「・・ああっ・・!」

 俺が射精すると彼は白く濁ったそれをぺろりと
舐めて「まだまだ若いな」と言った。

「リボーンだって・・」

 反論する俺の唇を塞ぎ、後方からゆっくりと侵入する。
先端が入るだけで骨の髄までおかしくなってしまいそうだ。
 彼が俺の腰を抱えてひどく激しく揺さぶるころには望みは
絶え果て、俺はひっきりなしに彼の名前を呼び、波のように
押し寄せる絶頂を体の一番奥で迎え入れていた。

 君が尋常でない殺気を伴って帰る日はいつも
 そのまま君に殺されたいと俺は思うよ。