KISS IN THE DARK
汗ばんだ肌に手のひらを重ねる。
絶頂を迎えたばかりの恋人は、額に腕を乗せ荒い息を繰り返していた。
ベッドサイドに腰掛け、綱吉の様子を見やるとリボーンは
ゆっくりと息を吐いた。酒の勢いでもつれ込んだ第一戦。
いつもより激しく、貪りすぎたらしい。
「リボーンのばか」
そう言われて彼は、テーブルの上のドライ・ジンを引っ手繰った。
「お前に言われたくねぇな」
「もう無理だって言ったのに」
「あの状況で我慢できるか」
「・・・」
だからもう、泣くな。
そう言われて綱吉は、額の上の腕を引いた。
薄茶色の瞳孔の回りは赤く腫れあがったままだ。
涙も枯れる程愛した証に、リボーンは片眉を上げた。
ぐうの音も出ないほど、泣かせるのも悪くない。
「・・明日、会議に出られないよ」
「休めばいいだろ」
「・・獄寺君に何て言えばいいの」
「――俺が、しつこかったって言え」
そんなこと、と言いかけた綱吉の唇を塞ぐ。
ドライ・ジンにベルモット、チェリーブランデーを
等量加えれば舌の上で転がるのは、恋人達の飛沫に似た
炎のようなカクテル。甘くアルコール度数も高いそれに、
綱吉の唇は震えた。リボーンが口移しで飲ませたのだ。
「・・ん・・もっと」
「――何だ?」
「・・もっと俺を・・酔わせて」
お安い御用、とばかりに微笑む。
彼は気づいているだろうか。
望めば望むほどそれは遠くなる。
手に入れたと思えば零れ落ちる。
だから壊してしまいたくなる。
その枷に愛と名づけて。
リボーンはうつろな目をした綱吉の、赤い頬にキスをした。
それは森で旅人がともす松明に似て赤く、
触れれば焼けるほど熱く、自らを焦がしてやまないもの。
骨まで愛されたいのなら、暗闇でキスをして。